女性の就労を抑制しているとの指摘がある配偶者控除の見直しは、「小幅」に止まりそうだ。政府・与党は配偶者控除について、働き方にかかわらず対象にする「夫婦控除」への衣替えを検討してきたが、来年度税制改正ではいったん見送り、現在「103万円」とされている年収制限を引き上げるなど小幅の見直しに方向転換する見込み。中間層の税負担増や、来年の東京都議選挙への影響などが懸念されることから、党内で慎重論が根強いためだ。
配偶者控除は、年収103万円以下(給与収入)の配偶者がいる場合に、年間38万円の所得控除が受けられる制度。配偶者の収入が103万円を超えると配偶者特別控除に切り替わり、配偶者の収入増加に伴って、世帯主の収入からの控除額が縮小する。夫がサラリーマン、妻がパートの世帯などでは、夫の所得軽減の恩恵キープのために、妻が年収103万円を超えないよう勤務時間を抑制する傾向が指摘されており、「103万円の壁」とも言われている。
政府税制調査会は11月14日、配偶者控除の見直しについての中間報告を取りまとめた。政府税調のこれまでの議論では、多様な働き方に中立的な仕組みを構築する必要性の観点から、
(1)配偶者控除の全面廃止及び廃止により生じる財源を子育て支援の拡充に充てる
(2)世帯単位で税負担を捉える「移転的基礎控除」を税額控除方式で導入
(3)共働き夫婦も対象とする「夫婦控除」の導入
などを見直しの選択肢として提案している。
今回の中間報告では、これらの選択肢を再度提示した上で、現行制度における配偶者の収入制限である「103万円」を引き上げることも一案との意見があったとし、現行制度の控除枠拡大案を入れ込んだ。また、企業における配偶者手当の支給基準に「103万円」が援用されていることなども就業調整の一因になっていると指摘し、こうした手当制度のある企業に対して「抜本的な見直しを強く求めたい」とした。
配偶者控除の見直しは、安倍政権が掲げる「働き方改革」の具体策のひとつ。このため2017年度税制改正では、まずはこの「103万円の壁」を引き上げ、配偶者控除の存廃については数年かけて検討する方向だ。壁の引上げについては「150万円以下」という案が浮上している。ただし、控除枠を引き上げれば税収が減る。そこで、配偶者控除に年収制限を設け、年収が一定以上の世帯は適用から外して財源とすることも検討されるようだ。